BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

七左衛門の除蝗録 その7

 以上の方法は「鯨油」の調達に比較的容易だった九州地方で流行していたものでした。(その1)で触れたように、この『除蝗録』は七左衛門の死後に出版されたものです。七左衛門在世当時、まだ東北にはこうした「注油駆除法」は広まっていませんでした。じつは『除蝗録』は、九州地方で発展したこの駆除方法を、東北地方に広めようとの意図もあって出版されたのでした。
 ところが、その総論の部分に注目すべき一文があります。
「東北のうちにても出羽秋田ばかりはこの備えありと承りぬ。げにありがたき事也」というのです。「この備え」とは、注油駆除に用いる油と駆除技術の知識ということでしょう。東北一円に未発達だった注油駆除法、それが秋田においては、なぜか普及していたというのです。そしてそれこそが長崎七左衛門の功績でした。以下、七左衛門の著作をひもといていきましょう。