女神と男神 島根半島・美保神社
祭神は三穂津姫命(みほつひめのみこと・大國主神の御后神)と事代主神(ことしろぬしのかみ・大國主神の第一の御子神)。男女二柱の神だが、イザナギ・イザナミのような婚姻関係にあるのではなく、義理の母子。
「美保造(みほづくり)」と呼ばれる社殿がおもしろい。大社造の本殿を左右二棟並立させ、その間を装束の間でつなぎ、木階を覆う向拝を片流れに二棟通しでつけるという特殊な様式なのだとか。ここに男女双方の千木の造作が対比して見ることができる。
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千木の突端が垂直になっているのが男神の社殿、水平になっているのが女神の社殿だとか。
ここの祭神はやや性格を異にするのだろうけど、世界のはじまりが男女二神であることを思うとここの社殿はいっそう興味深い。
ていねいに草取りをしている作業に見入っていたら、古式な神殿にはやや不似合いな神官の祝詞奏上の声が聞こえてきた。いわゆる「荒さ」のこもった若い男性の声。神楽を奉納する巫女の動きだけの方がいいのにな、と少々残念。
参道を出て左の小路へ入ると青みがかった石畳が続く。
通りの両側には木造長屋づくりのような古風な家並み。
数軒の表札に「鷦鷯(ささき)」と見える。『先代旧事紀大成経』の伝本の一つ「鷦鷯本」の名前。もしかするとここにゆかりあったのだろうか。
石畳の終わるあたりに、ところてん屋。ちょっとひと休みと、いっぱい三百円でいただくと、てんは四角く切ってある。くずきり風のところてんになれていたのでこれは初体験。もう少し潮の風味がするのかと期待したけど、思いのほか清水のような涼しい味わい。
車で数分の移動。半島突端の美保関灯台へ。
晴天だが、いつもは見えるという大山も、隠岐も見えない。黄砂、PM2.5の影響か。
咲き始めた花々、蜂、蝶。
昔の歌にあった。花を女性に、蝶や蜂を男性になぞらえた歌詞。
植物の受粉に手伝うだけで、実際には花と虫とが交わるわけではないのだけど、どうしても男と女を連想させるのだろう。
そういえば乱倫の関係は日本の神々の間では珍しくないよなと、青空には似つかわしくない美保神社の義理の母子のことを思い起こしていた。