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BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

能仁柏巌撰述『曹洞宗問題十説』明治八年(1875)十一月再版(同年四月稟准・自序、同五月初版)

先週ずっと本庁の養成所詰め。カンヅメ生活を言い逃れにアップをサボっていたので、反省。二つくらい行っとくか。

この資料は明治初期の教導職試験対策の参考書とも言うべきもの。一応、準公式的見解と言ってよいだろう。

全十条のうち、第四条にあたる「年忌葬祭説」は前半が「祭霊部七条」、後半が「送終部十条」に分かれている。まずはその前半。

 

 年忌葬祭説

 祭霊部七条

 一ニ年忌
 人死シテ初七日ヨリ七七日迄ノ追福ハ、地蔵本願経灌頂随願往生経等ニ出デタリ。中陰已一周忌三年忌等ハ礼記等ノ儒礼ニ出デタリ。七年已往ハ皇国ノ古礼ニ依ル。故ニ謂ク三教相ヒ因テ大ニ追遠ノ正則ヲ成スト、若シナヲ悉カニセント欲セバ、仏祖統紀第三十四釈門正統第四及ビ孚信録等ヲ見テ之レヲ正スベシ。

 二ニ忌日
 人ノ死セル日ヲ忌日ト言フ。心ハ父母兄弟等ノ死セル日ニ当レバ、其ノ亡者ヲ念フノミニテ殺生等ノ不善ヲ為サズ忌ミ慎ムコト国ノ制禁ヲ守ル日ノ如クス故ニ忌日ト云フ。ソノ証ハ礼記祭義ノ篇並事物記原九云々(二十八丁)釈氏要覧ニ云、二月十五日仏涅槃日天下ノ僧俗供養ヲイトナム、即チ忌日ノ事ナリ。梵網経ニハ死亡ノ日ト云ヒ、灌頂経ニハ亡日或ハ命過日ト説ケリ。

 三ニ祥月
 毎年ノ忌日ヲ祥月ト云ハ、礼記ニ拠レバ親ヤ亡ジテ十三月ノ祭ヲ小祥ト云フ(一周忌ナリ)。二十五月ヲ大祥ト云(三年忌ナリ)。既ニ一周年三年ノ月忌ヲ祥ト云ニ因テ、コレヨリ以後毎年ノ忌日モ之レニ倣フテ祥月ト称ス。是レ吾ガ風俗ノ云習ナリ(祥トハサイワイト訓ズ凶服ヲ去テ吉服ニ従フ義ナリ)。問 儒礼ノ大小祥ノ祥ノ字ヲ取ル確証何ン。答 釈門正統第四(十八丁)ニ曰ク、百日ト大小祥トノ類ノ如キハ皆ナ儒礼ニ託シテ因ニ出世ノ法ヲ修スル耳ト云フニ拠ルナリ。

 四ニ忌日ニ請僧設斎
 梵網経ニ曰ク、父母兄弟和上阿闍梨亡滅ノ日(忌日ナリ)及ビ三七日乃至七七日モ亦タマサニ大乗ノ経律ヲ読誦シ斎会シテ福ヲ求ムベシ。又大仏頂経ニ曰ク、波斯匿王父王ノ為メニ忌日ニハ仏及ビ僧ヲ請シテ斎ヲ設ケテ供養ス。王自カラ迎ヘテ請益シテ食ヲヒキ施スト。又仏説譬喩経ニ云ク、仏ト阿難ト河ノ辺リニ到リ玉フニ、五百ノ餓鬼歌ヒツレテ行クヲ見ル。復タソノアトヨリ数百人ツレテ泣テ行ヲ見ル。阿難怪デ仏ニ問フ、仏ノ言ク彼ノ五百ノ餓鬼ノ家ヘノ児子親属各ノ親ノ為ニ福ヲ作ス、之レニ依テ今日餓鬼趣ヲ脱ス、是ヲ以テ喜デ歌ヒ舞フナリ。又数百人ハ其ノ家ノ児子殺生ヲ好ンデ曽テ追福ヲ作サズ、コレニヨリテ猛火身ニ逼テ熱ス、是ヲ以テ哭キ泣ナリトノ玉ヘリ。且ツ斎ヲ設ル功徳ハ正法念経及ビ賢愚経ニ明カナリ。東印請祖ノ話ノ如キハ又作麽生。

 五ニ回向
 回向トハ誦経等ノ功徳ヲ廻ラシテ彼ノ亡者ニ向ハシムル義ナリ。問 上ミ仏界ヨリ下モ餓鬼地獄界マデモ此ノ功徳遠ク廻リ至ルノ理何ンガ会得セン。答 纔カモ理会ニワタラバ法界飢餓ス。直ニ能所ノ根源ヲ截断シテ真実不疑ノ回向ナラバ有情非情同時ニ成道セン。若シ教相ニ依レバ一心ハ法界ヲ体トス。故ニ廻向心一念発レバ即チ三世ニ通ジ十方ニ亘ル、是ヲ以テ此ノ方ノ心ト彼ノ方ノ心ト同一法界ナル故ニ礙ヘズ直チニ至リ通ズルナリ。(甚深大廻向経華厳十廻向品涅槃経宝積経瑜伽論等及ビ宗鏡録第三十三丁同第四十一十四丁同第九十三丁)諸宗ノ回向各ノソノ趣キアリ。且ツ念仏門ニハ往相還相薫発直出等ノ廻向アレドモ今マ此ニ略ス。

 六ニ霊供
 中有ハ総ジテ一切ノ飲食ノ香ヲ以テ食トス。倶舎ノ頌疏ニ曰ク中有ハ香ヲ食スレバ尋香ト名ク。又云ク若シ少福ノモノハ唯ダ悪香ヲ食シ若シ多福ノモノハ好香ヲ食トナスト。昔シ後醍醐天皇百味ヲ備レドモ未ダ微消ヲ見ズ、亡霊ニ達スルヤ否ト勅問アリシ時キ、瑩山禅師遺教経ヲ引テ蜂ノ花ヲ採ルニ唯ダソノ味ヒノミヲ採テ色香ヲ損セザルガ如シト答フルモ此ノ論ナドノ意ナル可シ。
 問 中有ハ香ヲ食スレドモ若シ六道ノ中チ何レヘナリトモ生レカハレバ供ヲ備ルハ無益ニアラズヤ。答 父母ノ神識善悪ノ業ニ引レテ六道ニ生レカハルトモ、子孫アツテ之レガ為ニ至誠供ヲ備レバ、必ズソノ身ニ達シテオボヘズ無量ノ福ヲ得ルコト疑フベカラズトハ、已ニ古徳ノ説ナリ、況ヤ一心法界打テバ必ズ響クガ如シ。若シ実ニ父母ヲ思フテ忘ルルコトアタハザル孝子ナラバ、何ゾ有益無益ノ分別ヲ用ン。況ヤ業力ニ依テ千載モ留ル精霊モアリ、願力乗ジテ億劫モ住スル菩薩モアリ、至信ニ供スレバ必ズ其ノ益アルコト疑フ可カラズ。

 七ニ霊供ノ本証
 蘇婆呼童子経(七丁)曰ク、念誦ノ人若シ食セント欲セン時ハ、先ヅ鉢中ノ飯ヲ出シテ分チ五分ト為シ、一分ヲ路行ノ飢人ニ施シ、一分ヲ水中ノ衆生ニ施シ、一分ヲ陸地ノ衆生ニ施シ、一分ヲ七世ノ父母及ビ餓鬼ノ衆生ニ施スベシ。第五分ヲ足ルト足ラザルト自ラ食スルナリト。此レ即チ霊供ノ本証トスベシ。又阿含ニ死人ノ為メニ布施祭祀スルトモ餓鬼ノ中カニ生ズルモノハ得レドモ余趣ハ得ズ。各ノ活命食アルガユヘナリトアレドモ若シ其ノ冥益ニ至テハ何レノ趣ニ在テモ其ノ福ヲ受ケズト云コト無シ。況ヤ大乗ノ意ハ一器ノ浄食ヲ以テ普ク一切ノ法界ニ供養シテ飽キ足ラシメズト云コト無ク、又彼ノ業報ニ依テ食ントスレバ火ヲ生ジ、飲ントスレバ熱湯トナランニモ、仏祖嫡嗣ノ加持力ヲ以テ忽チ甘露微妙ノ美味トナシ、普ク法界ノ餓鬼ヲ飽カシム。(宗鏡録三十二六丁)且ツ洞山供真ノ話ノ如キハ諸人作麼生カ会ス。