水野弥穂子『『正法眼蔵随聞記』の世界』大蔵出版、199210
カトリックの学校にあって、仏教への関心から、橋本恵光老師について得度、沢木興道、酒井得元、内山興正各老師への参学、道元の著作との出逢い等語る「序」が印象深い。
袈裟を把針し、信仰する思いで宗典を読むその姿勢に、自分の身を恥ずかしく顧みる。
書誌的な考証に重点を置く〈第2部〉も参考となるが、著者の真骨頂は〈第1部〉の「先師全和尚入宋せんとせしとき」だと思う。同代を重ねて三回。
道元の明全への思い。そして明全と明融、道元と如浄、道元と懷弉、道元と若き学人、懷弉と母。各人の思いが重なり、輻輳して求道と恩愛の狭間にたつ人間の姿を浮き立たせる。
この著者は、ここに仏道を認めたのだろうな、と思わせる章。
こんは人があとどれだけいるだろう、出てくるだろう。