BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

「お盆」十題 その9 “なす牛ときゅうり馬”

「ひねなすび馬役をあいつとめけり」小林一茶

ナスとキュウリを牛馬に見立てて盆棚に飾るのはいつ頃からだろう。
中国起源かなと思ったけど、ちょっとわからない。日本オリジナルだろうか。
おもしろいと思うのは現世と来世を往還する次第が「陸路」であるという共通理解が出来ているということ。天上から降りてきたり、地下から湧いてきたり、海の彼方から舟でやって来たり、とは考えられていない。
思えば、死出の旅立ちもまた笠、杖、草鞋を支度して陸路に臨む装束だった。イザナギが黄泉国の人となったイザナミに追われ、すんでの所で逃げ延びるヨモツヒラサカは、あの世(地底)とこの世(地上)をつなぐ境界と考えてよいが、そこもまた「坂」という陸路である。
「あの世」と地続きの「この世」。お盆に帰り来る死者達が、いつも一種の「慕わしさ」を具えているのはこうした理由からかもしれない。

http://www.i-nekko.jp/%E3%81%8D%E3%82%85%E3%81%86%E3%82%8A%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%99.png