よし と 憂し
月例で行っている輪読会。昨日のテキスト『驢鞍橋』(鈴木正三著)より一節。
ある人、問う、
「古歌に“なかなかに 深山の奥ぞ住みよけれ 草木は人の是非を云わねば”とございます。これは仏道を詠じたものと聞いておりますがいかがなものでしょうか」
正三師、いわく、
「わしだったら、一字を直したいところがある」
その人、いわく
「どの文字でしょうか」
正三師、いわく、
「“なかなかに 深山の奥ぞ住み憂けれ 草木は人の是非を云わねば”」
武士の出身である江戸初期の傑僧、正三師。侍精神あふれる仁王禅を説き、一応曹洞宗に属するとは言え、自分の見識に合わなければ道元をも堂々と批判する。ポピュラーな禅書ではあるけど、きちんともれなく読んでみるとかなりおもしろい。この一字詠み代えの和歌も、やられた感たっぷりでした。