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BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

葛黒火まつりかまくら その3

  大勢の人力だけで大木を立てる祭りとして知られるのは、長野県諏訪大社の「御柱祭」。

 実見したことはまだないが、切り出しから、山の斜面を滑り落としてくる木落、など一連の行事の最後を飾るのが「建御柱」。死傷者の出るもいとわず、毎年の開催を重ねる奇祭として知られている。

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 おそらくはこれに類すると思われる「柱建て」行事が横須賀市大津・諏訪神社で行われていたり、ネット情報ではいくつか検索できる。


里に大木、大祭完遂 横須賀・大津諏訪神社で「建御柱」 | カナロコ

 葛黒の場合、その規模は小さいが、ご神木を人力のみで山から切り出し、里の会場まで運び、大勢で起ち上げるというのは共通するところ。

 もっとも諏訪大社の場合は4月~6月にかけて行われるもので、小正月に、新年の神迎え行事として行われると考えられる「葛黒火まつりかまくら」とは、基本的な部分で違う面もあるだろう。

 だが、双方の総体的な祭りの比較ではなく、今は人の力のみで大木を立てるという部分にのみ注目してみたい。「葛黒」の場合、平成26年の春には約12メートルのご神木であった。

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 起ち上げに関わった人数は約百余名、木の下に入りつっかえ棒のハサグイなどで持ち上げるもの、三方に分かれてロープを引くもの、全体を見渡しながら合図をする指南役数名。起ち上げに要した時間は45分。これは好天のせいもあって比較的短時間だったという。

 「さあ、したら五センチだけ上さ上げるど~!」というかけ声を繰り返しながら、じわじわとご神木は起ちあがってゆく。一気にロープを引いてバランスを崩したりすると、木の下で支えている者がつぶされてしまう。何よりも必要なのは熟練した指南役の慎重な配慮と誘導だ。

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 起ちあがったご神木は、約1メートル程度の深さの雪にその根元を埋めて固められる。当初、私たちはその程度の深さでは何かの拍子に倒れてしまうのではと心配した。だがそんな予想に反してご神木はびくともしない。

 「かえって火が収まってから倒す方が大変なんだ」と指南役の声。

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 さて、人の力でご神木を起ち上げる。この意味を考えてみる。

昨冬、かまくらの準備打ち合わせの中で「まつりの手伝い人数が確保できないようだったら、重機を頼んできて機械の力で起ち上げたらいいんじゃない」という発言をしたら、たちまち集落の人から「だめだ。自分がたでやるやった」とたしなめられた。高さ10メートル超、推定重量二トン以上。「人の手でやる」ことが何より大切なのだという。

 諏訪大社御柱建もおそらく同じだろうか。葛黒の場合は、闇夜から降臨する歳神の依り代となるのがこのご神木。天空から下界を臨む神にすれば、できるだけ高く、そして煌々と明るい炎である方がよい。およそ日常的な人の力ではなせる技ではないものを、現実にする。その非現実さが神の好むところなのだろう。非力な人間の技であるからこそ神の歓心を買うことができるのだろう。機械の出番など最初から無いことになる。