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BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

二年目の「葛黒火まつりかまくら」

 昨年の再開が15年ぶり。数々の心配もどうにかやりくりし無事の復活が成った。

 思いもよらぬ晴天に恵まれた昨年。今年はどうかと心配する声をよそに、まつり当日の朝は雲の切れ間に青空がのぞいていた。幸先はよい。

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  •  葛黒集落、現在は二十数戸。
  •  竜ヶ森を水源とし、北を流れる小猿部川、南を流れる品類類川、その二つがよじりあって下流域の本郷・七日市村(現在、北秋田市七日市)を過ぎり、さらに北上して米代川に合流し日本海へ注ぐ。
  •  七日市村から二本の川に沿って背中合わせに続く細長い二つの流域。
  •  この流域に十六の集落が点在する。小さな集落は十戸に満たない。大きな集落でも、やっと四十戸。葛黒は上から二番目に戸数の多い集落である。かつては四十~五十戸の集落が三地区ほど在ったが、今では半減、あるいは三分の一に減じた。
  •  冬になれば狭い谷間に圧し積もる雪の下で、集落の人達はじっと春を待っている。
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  •   火まつりを再開させなければいけない、という気持ちはこの光景を前にして抱いたものだ。

  •  現実の社会生活に具体的に関わるすべをひとつのまつりが持てるかどうか。その可能性を問う前に、まずやってみよう。その思いがあった。いくつかの経緯はこのblogに挙げてきた。「結衆の原点」、ねらいはその場を作り出すことにあった。
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  • 昨年よりもかなり離れた山から栗の木を切り出してくる。今年は道のりも長かったことから、トラクターで曳いてくる場面もあった。昨年はオール人力。 
  • 「13メートルあるな」「いや、これだば14メートルだ」
  • 自分の目で見ても昨年より長く、そして幹も一回り太いように感じる。
  • はだかの神に衣装を「まがなわせる」。ハサ掛け自然乾燥したワラ(大館市の篤志者と地元・南小学校学校田のもの)、竹、笹、まめがら。
  • まずは小束のワラ束をたくさん造る。それを縄で神木に結わえていく。ひとまわり、ふたまわりと幾重にも重ねてゆく。太くなったところは藤ヅルで結わえてゆく。このために秋から用意していたという。
  • 巻き付ける力はゆるくない。大の大人がぐいぐい締め付ける。それを村の指南役たちがたしかめ「こんたゆるぐせばだめだ。これだば火つければすぐ落ちでしまう。もっとぎっちり丸って、太くさねばだめだ」と檄が飛ぶ。 
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  • 縄、藤ヅルをきつくゆわえたあとは笹、まめがら等を随所に差し込んでゆく。ここからは子供たちも加わり全員作業。夜には乗り移るご神木の「からだ」が出来上がってゆく。
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  • ご神木のまがなわせが終わると、いよいよ起ち上げ開始。
  • 今年は午後四時の開始と決め、一般参加の人も募った。
  • 四本のロープが巻き付けられ、加えて起ち上げに関わる専用の道具が用意される。これもまた11月にはそれぞれ吟味した用材を確保していたものだ。
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  •  起ち上げ開始。ロープは四本。それぞれに数十人がつく。が、ご神木が四十五度くらいの角度に上がるまではほぼご神木の下から支え上げてゆく力が全て。ロープに頼るのそれ以後の話。

  • 下でじわじわ持ち上げてゆく組の一人に入る。
  • 重い。昨年もこの下にいたが、かなり重い。十人以上はいるこの中で、一人の人間が重いと感じるというのはかなりのことだと思う。
  • 「さあいくど!」という声で男たちが5センチ、10センチの高さにまるまると肥え太ったご神木を持ち上げる。「うおおおお!」。てこにしていたドラム缶とご神木の間にこぶし一つほどの隙間が出来る。すかさずドラム缶を根本側に20センチほど寄せる。「まだ下ろすな!」。ご神木を下ろしたときに外れないようにドラム缶を芯に当てる。「よしゆっくり下ろせ」。自分たちの身体にかかっていた重量がドラム缶に移譲するのがわかる。指南役のひとりが「今年は3トンだ」という。実際に重さを量っているわけではないので真偽のほどはさだかでない。
  • ドラム缶が支えている間に「はさみ」の位置を少しだけ前にずらし、我々も半歩ほど根本側に足場をつめてご神木の下に手を入れる。山手側、川手側、均等に支え役がスタンバイできたのを確認して指南役が号令する。「せーの、それ!」。「うおおおおっ!」。
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  • じわり、じわりとご神木は起ち上がってゆく。しかしそのまま単純に上がってゆくだけではない。ご神木の上方には数本の枝が張りだしている。そこにワラやまめがらがぎっしり巻き付けてあるの。その重さでご神木が持ち上がるに連れ、重量のある枝が下に行こうとしてご神木がねじれるように廻転するのだ。

     

     

  • 根本から8~10メートル先の枝が1~2度廻転するだけでも、枝先は1尺以上ぶれる。そこを支えていた人間がたまらず足場を移動する際にわき出支えていたハサゴに挟まれそうになる。しかしだからといって手を放せばいままで支えてきた重量が周囲の人間にかかる。ひとりだけならどうにかなるが、これを3~4人一度に手を放されたら、たちまちご神木の重圧は下にいる者達を圧し潰す。
  • 30分以上経ってもまだ45度の角度にならない。下から支える一人から声が出る。「あどロープで引かせればいんでねが」。しかし角度が浅いうちはロープに頼っても立ち上げの力にはならない。

  • その声が出るのもわかる。下を支える側はもうじかに手でご神木に触れているものは一人もいない。みなハサゴやハサミの先でご神木を支えているのだ。ご神木は2~3メートル先で宙に浮いている。これ以上持ち上げるにはどうすればいい?
  • これはご神木が長くなったためだ。下にいる者達が昨年と同様に持ち上げたとしても、ご神木の角度は昨年ほど上がらない。これをさらに上げようとするには下から支えている支点を、もっと根本側にずらすしかない。だがそれはかなり危ない。ご神木を支える支点を、あまり根本側に近づけてしまうと、ご神木の上部に重さがかかり、シーソーのように上部側へ倒れてしまうかも知れない。そうすれば支点の男たちは潰されてしまうだろう。
  • そのとき、四本のロープのうち一本が切れた。
  • ばちっ、と音がして力の抜けたロープがハサゴと枝の間から空に舞うのが見えた。ずし、と重さが加わる。「おいおいおいっ!」。どよめきが走る。
  • 切れたのではなく、ほどけたらしい。すぐに指南役の一人が結び直す。
  • f:id:ryusen301:20150216120644j:plain宙で支えていたご神木をようやくロープで引き始める。

  • ここまでくれば下からの支えは徐々に人数を減らしていっていい。ほっと一息ついて戦列を離れる。 

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  • 一本に数十人ずつついているロープが四本。指南役の号令に合わせて「よし、したら50センチだけ引っ張るどお」。
  • だがこれも慎重に微調整をくりかえさなければならない。四本のロープが均等に力を配分しつつ引かないと、ご神木は横に廻転してしまうだけで上には上がらない。もしその廻転の度合いが大きくなると(と言っても1~2度のことだが)、ご神木の根本を雪中で受けとめている栗の厚板からご神木がずれてしまう。
  • ロープを引く立ち位置をそれぞれ山手側、川手側にずらし、何度も調整しながらゆっくり、ゆっくり引き上げる。
  • 指南役から「これでよし」の声。13メートル超のご神木が、天を突いて雪原に屹立した。ここまで起ち上げ開始からたっぷり一時間かかった。
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     5時立ち上げの終わったご神木の前で、夕暮れ前にとすぐに集合写真。

  • 数は少ないけれど、売店もそこそこのぞいてくれる。
  • この日のためにやってきたという葛黒出身で東京在住の方としばし歓談。火まつりの再開を喜んでくれ、「東京にいる人達にまつり存続のための協賛金お願いしたらいいよ」との提案。ありがたい。
  • 6時。指南役の一人からまつりの説明。実行委員長、市長の挨拶。
  • そして点火。
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  • 夜の雪原に大きな火柱が起ち上がる。 
  • 風も無く、燃焼材となるワラの巻き付け分量の多かったこともあり火の勢いはなかなか止まない。「こんたによぐ燃えだのは初めてでねが」と葛黒の人達からも賛嘆の声。火の粉がさらに空高く吹き上がり、仕掛け花火のようにさえ見える場面もあった。
  • はるか天空の彼方から、闇に沈む大地に赤々と輝く一点をめざして歳神が降臨する。炎の勢いに茫然と見入る私達はその瞬間に気づかない。神はそんな気配さえ悟らせないのだ。
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  • 火の鎮まるのを待って、表面の焼け焦げたご神木を倒し、チェーンソーで細かく切り分け参加者に配る。歳神の恵みの 分与。

  • 会場へ出入りする車の誘導も、昨年の教訓をふまえ今年はスタッフが入念に対応を心がけた。はたして来場者はどう受けとめたか。
  • まずはひと安心。会場の片付けをあらかた終えて、反省会の乾杯の声が上がったのは8時を過ぎた頃。
  • 豚汁と山菜の煮物。うまい酒だった。
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