よこみち【真読】 №23 「粉末じゃない塗香!?」
塗香と言えば、画像のように小さな塗香入れに入っていて、トントンと中の粉末を手に少量取り、両手でこすりこすりしてその香りをなじませるもの、ということなのだが。
http://www.tendai.or.jp/houwashuu/kiji.php?nid=23
これ、天台宗や真言宗では一般的に使われているようだけど(他宗もあるかもしれませんが)、曹洞宗ではあまり使っている人はいない。今はね。
ところが粉末じゃない塗香が、それも曹洞宗にありました。
しかもそれ、曹洞宗の無名のお坊さんや資料に見つけたんじゃなくて、ご開山・道元禅師の代表作『正法眼蔵』にちゃんと書いてありました。
これきっとご存じの方はご存じなんでしょうね。恥ずかしながら私、今回の調べもので初めてわかったような次第。いままで読んだと思っていたけど、まったく頭に入っていなかったんだなあと反省しきりです~。
で、それなんですが『正法眼蔵洗浄』巻に出てくる。
この巻は、お手洗い(東司)に入った時のお作法を大小こまか~に記したもので、う~むここまで決めるか、と学生時代に読んだ時はその徹底ぶりに唖然としたのを憶えている(そこは憶えているのね “笑”)。「大」を終えた後はしかるべき次第にのっとって、その部分をきれいに水洗いすることもここで説かれている。その昔、ウォシュレットが世に出始めた頃、戸川純が出演した秀逸なコピーのコマーシャルがなつかしい。
というわけで問題の塗香の記述は次の通り。
ツキニ公界ノ手巾ニ手ヲノコフ。アルヒハミツカラカ手巾ニノコフ。手ヲノコヒヲハリテ。淨竿ノシタ直裰ノマヘニイタリテ。絆ヲ脱シテ竿ニカク。ツキニ合掌シテノチ。手巾ヲトキ。直裰ヲトリテ著ス。ツキニ手巾ヲ左臂ニカケテ塗香ス。公界ニ塗香アリ。香木ヲ寶瓶形ニツクレリ。ソノ大ハ。拇指大ナリ。ナカサ四指量ニツクレリ。纖索ノ尺餘ナルヲモチテ。香ノ兩端ニ穿貫セリ。コレヲ淨竿ニカケテオケリ。コレヲ兩掌ヲ アハセテモミアハスレハ。ソノ香氣オノツカラ兩手ニ薫ス。絆ヲ竿ニカクルトキ。 オナシクウヘニカケカサネテ。絆ト絆トミタラシメ。亂縷セシムルコトナカレ。カクノコトクスル。ミナコレ佛國土ヲ淨ムルナリ。佛國ヲ莊嚴スルナリ。
これは「ご用」を終えた後、手を洗い、それに続く作法として記されているもの。
ここに見る塗香とは、宝瓶の形をしていて、親指の太さに、長さは四指を並べた幅くらいの長さ。その両端に穴を開けて、一尺あまりのひもを通し、浄竿という物掛けのさおに掛けておく。これを両手でもみ合わせると、香気が手にうつるというものだ。なるほど。
この方法だと、粉末と違って香木はそんなに簡単にすり減ったりしないだろうし、香りもごく淡く匂うように思えてなかなか情趣を感じさせる。
これ今でもご本山はじめ曹洞宗のお寺でやっているところはあるのだろうか。もしどこかにあったら写真などアップしていただければありがたい。