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BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

よこみち【真読】№44「秘められたる “ X ”」

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 秘仏、霊像、本尊・・さらにいくつかの名称を持つ礼拝の対象。便宜上ここでは“X”としておこう。
 Xの正体はふだんは隠されている。そして多くの人はこのXに惹きつけられている。Xの姿を見たい。あるいはXに触れたい。Xを独占したい。それほどに魅力的なのがXだ。
 もしXの姿があからさまに公衆の目にさらされたら・・。それはじつは多くの人びとがじつはよく見知っていたある物とさして変わらぬ姿形をしている。だが、その物は昼日中に公然と口に出来る物ではない性質を持っている。ほぼ予想は出来るものの、自分の知らない意外な特徴を備えているかも知れない。隠蔽、秘匿され、それにまつわる事実についてはある限られた者達以外は一切知らされていない。それゆえにXに関わる人びとは、Xをめぐるある種の共犯意識‐他言しては成らない秘密を共有していることから生まれる‐を持っている。

 あるカルチャー教室で仏像の学習会を担当した時、参加者の一人から言われた。
 「私のお世話になっているお寺では、本堂にお詣りしてもご本尊が見えないんですよ。金襴の幕とかいろんな物が懸けてある奥の方にあるみたいで、どんな仏像なのかさっぱりわからないんです」
 こういう人は少なくないと思う。今回の本編の所説がその答えになるだろう。

 うちのお寺ではほぼあけすけに見えるようにしてみた。正面、そして左右ががら空きになっているからだ。というのは、数年前ある事情から本堂、仏像を新しく支度しなければならない事情が生じ、お檀家さんにも多くの負担をお願いして建設事業に取りかかることと成った。その時安っぽい人情が働いたと言うべきだろうか、「みんなのお金で迎えたものなら、みんなからよく見える方がいい」と考えそんな造りにしたのだった。

 仏とは違うが、もう一つのX、“女人”の場合もおそらくしかり。光源氏も女人の姿を御簾を隔てて認めていたからこそ、あれだけ恋い焦がれたのだろう。

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 本編を読むと、Xの宗教的霊力の発現は、隠蔽され、不可視化されている方が強力なのではないかと思える。その逆に姿の露見しているXは霊験の力が弱いのではないか。「わかりやすさ」は「霊力の強さ」につながらないのではないか、そのように自分を省みたりしている。

 隠されることによってますますその魅力を高めるX。
 気がついたことがある。このXを隠蔽しつつ、自らも輝きを放とうとするのが「荘厳具」ではないか。幡、蓋、華蔓、打敷、斗帳、そしてこの後に登場する羅網。いずれもXの周囲にあって、Xの存在を輝かせつつ、自らも光を発するものだ。ゆえに今回の本編は斗帳の条件について云う「浄きもの」をもって造れ、と。錦繍の衣材、金銀七宝の類、あらゆる貴重な素材を費やして荘厳の具は造られる。しかしてその最終目標はXのために。
 時折、側聞することがあるけれど、人体の秘所“X”を覆い隠すものもの、同様の性質を持っているとか。
 いや、Xって応用性高い。

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