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BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

よこみち【真読】№53「仏教と修験道の間に」

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 本編№53「法螺」をアップしたその日から、偶々神奈川県大雄山最乗寺で三日間を過ごした。曹洞宗修行道場として知られるこの寺は、もう一つ「道了尊」の寺としても知られる。

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 最乗寺開山了庵禅師に仕え、寺基開創にあたり500人力の大力量をもって貢献し、了庵亡き後は天狗と化身して、未来永劫一山を守護すると誓願した修験者である。その姿、火炎を背負い白狐に乗った像として、今日尚多くの信仰を集めている。
 この寺で一日を過ごしていると、時折山内から法螺の音が聞こえて来る。数ある吹奏楽器のどの音色とも違う法螺の音。なにかことの始まりを告げるような、あるいは一つの場面の終わりを知らせるようなその音。
 天狗と曹洞宗寺院といえばさらに、静岡県の秋葉山秋葉寺の三尺坊、群馬県の迦葉山弥勒寺の中峯などが著名な例である。

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 これらの寺で儀式法要の際に法螺が鳴奏されるのだが、天狗信仰とそれほど深いつながりのない他の一般的な曹洞宗寺院では法螺の使用されることはほとんど無い。その用意の無いのがむしろふつうである。もっとも近年は晋山式の行列において使用される場合がたまにあるが、それは古来からの伝統と云うよりも、どこかの晋山でやってみたら物珍しさも手伝って思わぬ好評を得たのでよそでもやってみた、という場合が多いように聞いている。
 逆に修験道における法螺の使用は一般的なことであって、山伏が法螺を吹くシーンは多くの人がイメージできるくらい世に浸透している。

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 このように曹洞宗寺院では「珍しい」法螺の音の響く大雄山の境内にあって、気のついたことがある。それは思えばごく当たり前のことだった。
 本編に明らかな通り、法螺という音楽器は元来仏教のもの。修験道において法螺が使用されるのは仏教からの影響による。現在の密教宗派において法螺がどれほど使われているのか確かなことは知らないが、上に述べたように曹洞宗寺院では特殊なケースに当たるほど少ない。
 つまり仏教音楽器の一つである法螺が、修験道に受用され、さらに曹洞宗寺院へ逆輸入されたのが大雄山をはじめとする天狗ゆかりの曹洞宗寺院の法螺だと言えるだろう。
 こうした修験道と仏教との関わり、私自身の関心もあり、『真俗仏事編』を読み進めてゆく上でこのあといく度か話題にしていこう。