BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

【真読】 №59「位牌」 巻三〈祭礼部〉(『和漢真俗仏事編』web読書会)

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テキスト http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/818707 コマ番号31

 儒家に用いるところの位版(いはん)、または神主(しんしゅ)と名づくるものこれなり。仏家にもこれにならいて仮り用ゆるものなり。
 儒家の式を尋ぬるに、栗の木、長さ一尺三寸五分ある牌を造って、我が親、先祖等のそれぞれの在世の位官・姓名を書き誌して、その神霊をこれに託し憑らしむゆえに、位牌と名づく。『文公家礼』に、孔子の神主を聖牌(せいはい)と称す。『事物起源』には、版位と云う。また儒家の位牌を祭る法、『居家必要』に、孫氏・劉氏が説、因みに次の下に出す。視て詳らかにせよ。
 ○孫氏(孫偉)の『薦饗儀範』に曰わく、「唐の諸家の祭儀、皆な開元を用ゆ云々。古は士太夫皆な家廟あり。すでに虞するときは、主を作り官封を刻む。今、寝を祭る礼を以て参酌し、栗木を以て牌子を作る。高さ一尺三寸半なる。曽祖を曽大考官封と曰い、妣を夫人某の郡・某の氏と曰い、祖を大考官封と曰い、妣を某の郡・某の氏と曰い、父を顕考官封と曰い、妣を某の郡・某の氏と曰い、匣(はこ)にてこれを蔵す。薦饗に遇うときは、排弁を俟(ま)ち訖(おわ)りて、祭主、捧げて几(つくえ)に置き、祭り畢(おわ)りて、これをその匣にまた蔵す。正寝側室において香火を奉りて、旦(あした)にこれを朝(ちょう)する。(謂、晨(あさ)興(お)き、盥節(かんせつ:洗顔と整髪)し罷(おわ)れば、冠帯して室に入り、香を上(たてまつ)り肅拝して退く)」。
 ○眉山の劉氏が曰わく、虞はすでに葬りて返哭して祭るなり。けだしいまだ葬らざるとき、柩なお殯(もがり)に在り。すでに葬るときは返って亡ぜり。すなわち虞は、その神気の返ることを度して、ここにおいて祭り、以てこれを安ず。かつ木主を為(つくっ)てこれに托す。もって憑り依らしめり。ゆえにこれを虞主という云々。また曰わく、忌日の質明(あけぼの)に、几筵を正寝に設けて、位版を捧げて几上に置き祭り畢(おわ)る云々。
 これに拠れば、位牌をまたは「木主」とも「虞主」とも云う。