【真読】 №70「托鉢の錫杖」 巻三〈祭礼部〉(『和漢真俗仏事編』web読書会)
テキスト http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/818707 コマ番号36
『毘耶耶雑事』に云く、
「比丘、乞食して長者の房の中に入りければ、駭(おどろ)きて甚だ譏(そし)りけるほどに、比丘、仏に白(もう)す。
仏、云く、“今より、声をなして家に入て食を乞え”と、のたまいければ、
これより家々に入て乞う声あまり喧(かまびす)しければ、また譏る者甚だ多し。
仏、聞いて聴(ゆる)さず。“これより拳をもって門を叩いて食を乞え”と、のたまう。
かくのごとくしければ、人々なお驚き、何が故に我が門を打ち破るぞ、と呵(しか)りけり。
ここにおいて仏、のたまはく、“錫杖を作りて振るべし”と。
この時始めて錫杖を教えて作らしむ」(『事苑』これを引く)。
○按ずるに、托鉢の文字は、『金湯編』十三「無尽居士伝」に出たり。彼しこに云く、「ただ徳山托鉢の話を疑う」と。