森の恵み メープルサップ
以前紹介したメープルサップ。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=612097622261613&set=pcb.1734775393422360&type=3&theater
地元の里山にあるイタヤカエデの100%樹液。清澄な甘さのいかにも森の恵みという味わい。これを作って(採取して?)いるのはUターンして炭焼きをしている常男さん。
その常男さんの誘いで、樹液を採っているところを見学に行くことになった。
おさるべ元気くらぶのスタッフ、もと地元小学校長の和博さん、その呼びかけに応じた児童四人と先生一人。これに常男さんと私の一行八人の雪の里山プチトレッキングとなった。
よく晴れた土曜の朝9時。常男さんの炭焼き工房前に集合。雪がきらきらとかがやいている。ダイヤモンドダストの見える、ということは、氷点下10度近いのだろうか。
子どもたちはそれぞれかんじきを用意していた。聞けば学校で四年生以上の児童全員の分を用意しているという。小規模校ならではの計らいだろう。着用しなくても大丈夫だろうとは常男さんの言だったが、せっかくだからと持参のかんじきを取り付ける。
「20分くらいかかりますよ。ゆっくり行きましょう」
常男さんのトラクターが先導するあとを一行がついてゆく。風も凪いで気分は爽快。
山に入り始める。梢を行き来するキツツキ。こぼれ落ちる雪が木漏れ日を浴びてスノーダストの輝き。時折ドラミングの音。子どもたちと一緒に感嘆の声を上げる。
「ほらここですよ」
右側は切り立った山肌。その上側にカエデの樹々が広がる。常男さんの指さす方を見ると緑色のホースとその先に取り付けたペットボトルが見えた。
「だいたい30個以上仕掛けています」
という。
一年のうちで樹液が出る時期は決まっているそうで、2月下旬くらいがちょうどよいという。それも気温が四~五度くらいと、いわゆる寒の温んだ頃合いがもっともいいらしい。
「今日はちょっと気温が低すぎるんですよ。みんなに樹液を飲ませてあげたいと思っていたのに残念だなあ」
常男さんが悔しがる。
ほんとうはサトウカエデがよいらしいが、イタヤカエデでも充分大丈夫という。近くへ寄って見せてもらうと、ドリルで空けた穴にホースを入れ、その先を入れたペットボトルを細いロープで木につり下げている。
「出る時は一日でこれにあふれるくらいですよ」
凍みた樹液が融けて出てくるというわけでもないらしい。あくまでも樹木体内の旺盛な循環運動の横溢ということらしく、〈生き物〉を感じる。イタヤカエデがこうした里近くで群生しているという好条件も珍しいそうで、なんとかこれを市場に載せたい、と常男さんは言う。
まわりにはウサギやカモシカの足跡らしいものが数多くある。カエデだったら秋の紅葉のさぞきれいだろうと聞くとその通りという。
「ここは自然の大都会ですよ」
そう誇らしく語る常男さんが頼もしい。
全国では山形がこの取り組み(メープルサップ採取・販売)の先進地らしい。ほぼ同等の地理的条件を持っていると思われる秋田でははなはだ取り組みが薄いという。なぜと聞くと、
「保健所の衛生基準がとっても厳しいんです。他の地域のひたとたちからも、秋田は難しいよ、と言われました」
さっきとは別の悔しさをにじませて常男さんが言った。
常男さんのような熱が地域に伝わればいいと思う。そしてそれを次の展開につなげていきたい。