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BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

【真読】№86「廻国納経」 巻三〈苦行部〉(『和漢真俗仏事編』web読書会)

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テキスト http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/818707 コマ番号39

 六十六部の納経の人、今の世はなはだ盛んなり。これ北条時政前生納経の事より起これり。
 ○『太平記』第五に曰く、「昔、鎌倉草創の始め、北條の四郎時政、榎嶋(江ノ島)に参籠して、子孫繁盛を祈りけり。三七日に当たりける夜、赤き袴に柳裏の衣着たる女房の端麗美麗なるが忽然として時政が前に来て、告げて曰く、“汝が前生は箱根法師なり。六十六部の法華経を書写して、六十六箇国の霊地に奉納したりし善根によって、再びこの土に生まる事を得たり。去れば子孫永く日本の主と成て栄花に誇るべし。ただしその挙動、違う所あらば、七代を過ぐべからず。吾が言う所、不審あらば国々に納めし所の霊地を見よ”と言い捨てたまう。その姿をみれば、さしも厳(いつく)しかりける女房、たちまち伏し長(たけ)二十丈ばかりの大蛇と成て海中に入りにけり。その跡を見るに、大なる鱗を三つ落とせり。時政、所願成就しぬと喜んで、すなわち彼の鱗を取って旗の紋にぞ押したりける。今の三つ鱗形の紋これなり。その後、弁財天の御示現に任せて、国々の霊地へ人を遣わして法華経奉納の所を見せけるに、俗名の時政を法師の名に替えて奉納筒の上に“大法師時政(じせい)”と書きくるこそ不思議なれ」。