よこみち【真読】№132「暮らしのおなやみ解決します」
日常的な仏事の疑問回答集というスタイルの『真俗仏事篇』において、今回のような話題はやや異質だった。吠える犬を制する・・。
こんなおよそ「仏事」とは遠い話題もしばしば出てくるところがこの本のおもしろいところなのだが、こんなところにオモシロサを感じてしまう私のような人たちにオススメしたい本がある。それは『修験深秘行法符呪集』という。タイトル通り修験道のもので、さまざまな行法万般にわたる護符作成法や呪法儀礼を集めたものだ。れっきとした仏教儀式に関わるものはむろんだが、あやしげでおもしろげなものも数多い。いくつかのその項目を挙げてみよう。
火傷を治す呪
酒の口を開ける加持
悪酒を善くする符
死霊教化の事
狐の荒れ啼き亘る時立てる符形
鼬(いたち)道を切る時立てる符
鼠(ねずみ)退治の符
鼠衣装等を喰う時立てる符
盗人調伏の事
悪人来を除(さ)ける符呪
疱瘡を除(よ)けの符
歯痛を治す法
魚骨咽喉に立つ時抜く呪
田蟲食損の祈祷札
衆人愛敬の大事
恋合の呪
離別の法
求子の大事
難産護符
小児の夜泣きを留める加持法
etc.
という具合である。まさに生活全般にわたる便利百科のような観がある。ご関心の御仁はぜひ実際に本書を手に取ってご覧いただきたい。
と全くここで内容に触れないのも不親切だと思うので、一つだけご紹介しよう。それは「離別法」である。この秘法、男女間に関することらしい。別れたいがなかなか別れられない場合に、あとくされ無くきれいに別れるためのもののようだ。以下、秘法の紹介である。
男より女を離別せんと思はば、女の着物の襟に本人の知らざるようにしてこの符を入れ置くべし。女より男を離別せんと思はば、男の着物の襟に入れ置くべし。
この符を書くには、二又川の水にて、未だ別れざる所、まさに別れんとする所の水を以て書くべし。またこの符を書く墨へ、茗荷と山鳥の尾を黒焼きにして加え用いるなり。
加持には観音経、心経、金輪の呪、荒神の呪を以てよくよく祈願するなり。
以上が本文。そして護符の書き様は次のようなものだ。
二股に分かれる川の、その別れ際の処の水を用いて墨を摺りその墨液にて書くのだそうな。「我れ思ふ、君の心ぞ離れつる。君も思はじ、我れも思はじ」なるほどねえ。
実際にこの問題でお悩みの方もあるだろう。ものは試し。ぜひとも実行してはどうだろう。そしてその首尾ついてもぜひ教えてくださるとありがたい。
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