BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

【世説】№3「六蔵(むつかし)」

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 俗に六借(むつかし)の字を用ゆ、然れどもこの字義、古来審らかならざることなり。有る人の言えるを聞くに、俗語ムツカシと云うは、『雑阿含経』の説に、亀の六つを蔵すと云うより起これり。しかれば具(つぶさ)には六蔵(むつかくし)と云うべし。ムツカシは中略の訓なり。
○『雑阿含経』に云く。「亀有り、野干(やかん)に得られる六つを蔵(かたく)出さず。野干怒りて去る。佛、諸の比丘に告げ玉わく、汝、当に亀の六つを蔵すが如くすべし。自ら六根を蔵せば、魔、便りを得ず。」[文]
 六つを蔵すとは頭、尾、両手、両足を甲に引き入れて蔵すを云う。彼の亀の野干に責められ畏れ嫌ふて尾頭等を蔵せるは、さも慵(ものう)きことなり。故に俗、これを取りてモノウキ事を六蔵(むつかし)と云うなり。[これに依れば、文字六蔵に作べし。
○按ずるに、亀の六を蔵す、『法句譬喩経』にも出ず。