法具の密教的意義について その2
金剛流流祖 曽我部俊雄師像
「金剛和讃」の作者・曽我部俊雄師は、金剛流御詠歌の音符・楽理(音楽的理論)・所作・指導原理の大成者と評される人で、「金剛和讃」が発表された昭和四年九月には金剛流詠監職に就任し、後には「金剛流流祖」の称号を得ている。ちなみに金剛流の発足は大正十五年である。
「金剛和讃」の内容に入る前に、曽我部師がこの和讃を作成した機縁を語る曽我部自身の文章があるのでそれを紹介する。
ここに見るように、「金剛和讃」は曽我部による「一種の霊感」によって感得され、一気に作られたことがわかる。
そして曽我部自身による「金剛和讃」の解説と、その解説を通じての金剛流詠歌道の「指導原理」が、その後の金剛流そして密厳流に大きな影響を与えているのである。それは〈その1〉で掲げた金剛界曼荼羅の成身会を基礎とした、金剛流御詠歌の事相教義による意味づけであった。
なおここに挙げた曽我部の文章は、もと昭和8年に刊行された『大師主義三十講』に収められた、曽我部執筆「金剛流詠歌道」の一部である(平成4年に『金剛流流遡行録』として覆刻再刊された)。
それでは次に「金剛和讃」に展開される法具の密教的意味づけが、どのように解説されているのかその実際をみていこう。