よこみち【真読】№41「The Sheltering Sky」
天蓋というとどうしても連想しちまうこの映画。
灼熱の砂漠。アンニュイにしてインビなマルコビッチとデブラ・ウィンガー。はまるよね、ベルトリッチって。
じつは〈天蓋〉、大好物なネタの一つ。
以前ちょっと触れておいた「龕」にちなむ葬天蓋のこと。
http://blog.hatena.ne.jp/ryusen301/ryusen301.hatenablog.com/edit?entry=12921228815725922431
『百鬼夜行絵巻』に登場する天蓋様のモノのこと。
そしてこれらにまつわるあれこれを採りあげてゆくと、おそらくこれまでの「よこみち」のボリュームの10倍くらいになりそう。そういう読むのだけでたいへん、ってのはこの場所向きではないと心得ているので、ここではふれない。「なんだ、もったいつけるなよ」と、多少のめんどくささは心得た上で読んでみようじゃないか、という人はこちらをどうぞ。
じゃ、ここではなにやるんだ?というと、曹洞宗業界の皆様のためにご紹介したい情報を一つ。
曹洞宗寺院ではどんな天蓋を懸けたらいいのか?ということ。研究畑の先生達はたぶんご存じだと思うけど、一般のご寺院さんは知らない方も多いのではないだろうか。仏具屋のカタログを見ると数百万円というものもめずらしくない。ご寺院さん以外にはなにそれ?状態かもしれないが、お寺の本堂の天井にぶら下がっているあのでっかいシャンデリアみたいなやつである。(下の画像で言えばまん中の大きいやつのこと。周りにある四本の細いのは憧幡と言います)
それこそ仏具屋のカタログでは大きさはもとより形も円形、八角形、六角形、四角形。さらには鳳凰やあるいは龍をあしらったり、彫刻や瓔珞に凝ったりなんかして、いろんな形態がある。
ところがこれに、ちゃんと曹洞宗のご開祖・道元の著作の中に、正しい天蓋の形についての記述がある。でももう一度「ところが」と言ってしまうが、このことはあまり曹洞宗ご寺院の中に浸透しているようすがない。私もささやかながらあちこちのお寺におじゃまする機会があるが、この記述に従った天蓋を備えているお寺には、まだ一度も出逢ったことがない。たしかご本山にもなかったように憶えている(まちがっていたらごめんなさい)。
さてその記述は、道元が中国に渡り、生涯の自分の本師!と心に決めた如浄和尚様に参随している時、そのお師匠様の教えをまとめた『宝慶記』という本に出ている。次の文章がその箇所だ。
これを見ると、その天蓋は「蓮華蓋」と言い、
その形は、蓮華が大地を覆うかのように作られているという。
具体的には八角形で、八面に鏡があり、八枚の憧幡がある。幡の端の角ごとに鈴を懸ける。華葉は五重で、葉毎に鈴を懸ける。そして道元が修行していた如浄が住職を勤める天童山の天蓋がこれだという。
曹洞宗業界の皆様、いかがだろうか。もしこういう天蓋をご存じであればぜひ教えていただきたい。そしてまたもし心ある人あれば、この記述に適った天蓋を造作されてみてはいかがだろう? きっと売れると思う。マージンのことは心配しなくていいから。