BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

【真読】 №113「火車来たり迎う」 巻四〈送終部〉(『和漢真俗仏事編』web読書会)

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テキスト http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/818707 コマ番号48

 問う、重悪人死するとき、火車来たり迎うこと、世俗専らこれを談ず。本説ありや。
 答う、提婆達多、逆罪を造るとき、大地自然に破れ、火車来たり迎えて生きながら地獄に入ると云へる、これなり。
 問う、いずくには出づ。
 答う、『智度論』十四に云く、
 提婆達多、出家して六万の法聚を誦す。十二年修行して仏の所に来たり神通の法を学ぶ。山に入りてこれを修し、五神通を得たり。自ら念(おも)へらく、「誰をか我が檀越とせん」と。王子・阿闍世王を瞻(み)るに、大王の相有り。遂に親しみを厚うす。王子、意惑うて祭園の中に大精舎を立て、提婆達多を供養す。徒衆となるもの少なし。ここにおいて自ら念へらく、「我、三十相あれば仏にも幾(ちか)し。もし大衆囲繞せば、なんぞ仏と異ならん」。かくの如く思惟して五百の弟子を得たり。
 しかるに仏、舎利弗・目連・五百の僧に説法教化して、悉く和合せしむ。
 その時、提婆達多、悪心を生じて、山を崩して仏を壓さんとす。金剛力士、即ち金剛杵を以て遙かに擲げければ、石、砕け迸(はし)りて仏の足の指を傷(そこな)へり。この時、華色比丘尼、大いに呵りければ、瞋りて拳を以て尼を打つ。尼、即時に眼出でて死す。三逆罪を作る。
 提婆達多、ここを去って王舎城の中に到らざるに、地、自然に破裂し、火車来たり迎えて生きながら地獄に入る。