よこみち【世読】No.11「忖度の風土」
かっちりした武家社会の階層意識の反映なのだろうか。
文書の最後に必ず「そうろう」と附けるのは「いかがおぼしめすぞ、と先様の気をうかがうなり」ということだそうだ。これは「いかがでございましょうか、と相手の機嫌を伺う」というわけだから、たとえこちら側が発信したものであっても、つねに先方の胸中を思い測っているというのが「そうろう」の成立している舞台なのだろう。
子登はこれを、かつて教えてくれた人の言葉を引いて「日本の」助護辞なり、この辞書を置かなければ文章として成立しない、と言う。相手の意向をつねに忖度していることがこの国の特徴なのだと子登は心得ている。
明治維新を経て武家制度はなくなり、第二次世界大戦の敗北を経て封建的意識の涵養は教育の中から排除されたかに言われてきたが、いまだに忖度の大切さが強調されているのは、我々の根っこは相変わらずと言うことだろうか。
そうそう、「そうろう」と言えばいつも思い出すことがある。ある友人とこんな会話をした。
私「生老病死(しょうろうびょうし)の克服が仏教の根本問題なんだってね」
友人「ソーローボーシだね」
私「ん、ちょっと発音違わない?」
友人「いや、早漏防止が問題なんだよ」
おあとがよろしいようで。