BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

江戸時代「警策」論議(3)

 ここからは実際に面山が当時見聞した実例集である。

 ある僧が、面山に各地の修行道場警策がどのように行じられているか話して聞かせた。それによると、

①タスキでもって衣のすみをたくし上げ、手にツバして警策を執り、鷹の目のように居眠りしているものを探し、ハヤブサのように飛びかかる(原文「鷹視して隼発す」)。その痛打するさまは杖打ちの刑とおんなじ。警策で打たれた方は、体力的に強い者は肩が腫れあがり腕が萎えるくらいで済むが、弱い者はほとんど悶絶してしまうような状態である。

②ちょっと睡っていて気がついてはっと目覚めた者を見つけると、わざわざそこへ行って、さっき睡っていた罰だと言って撃つ。

③自分がこっぴどく打たれた怒りと恨みをはらすために、自分に警策の当番が回ってくると、前の倍返しに痛打を浴びせて仇を討つ者がいる。

④生まれつき病弱のために警策を逃れようとする者がいると、大衆の面前でこれを侮辱し「無道心ものめ!」「無信心ものめ!」とののしられてしまう。おろかなる者はこの誹謗されることが嫌で、警策の痛打をがまんして耐えるのだが、そのために生来の病がますます重くなり、ついに非業の死を遂げてしまう。

⑤ひどいときは頭、目、耳、鼻などところかまわずめった打ちにし、そのため頭は傷つき破れ、耳は裂け、血まみれになりその血がしたたり落ちている者がある(原文「頭目耳鼻を択ばず、胡打乱打し、頭傷つけ耳裂け、血滴淋漓たるに到る」)。

 このように堂内の修行僧達が入れ替わりに警策を行うので、本来互いに敬い和合しあうべき兄弟達が、かえって恨みつらみの関係になってしまって、互いに争い傷つけ合っているような状態である。このため、夏安居で(暑いために)単衣の着物ときは、(警策を受ける肩の部分の布地が薄いために)肩が膿みただれている者が8~9割もいるありさまである。というのである。

 いやはや、たまりませんね。私も昔お寺にいた頃は、自分の肩が腫れ上がったりした経験はある。また警策の当たり所が悪く、鎖骨を折ったとか、耳がちぎれたなどと言うことを聞いたことはある。多くのお仲間の皆さんもご同様と思うけど、上記の状態はひどいですね。