BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

梅花考

大賀亮谿師範 その1

梅花流師範先達のお一人に大賀亮谿師範(静岡県・見性寺五世)がいる。 『必携』の年表などにその名前は見え、丹羽佛庵老師を筆頭に曹洞宗詠讃歌活動胎動期の一翼を担った人として伝えられている。 しかしその人と業績についてはほとんど知られていない。 た…

丹羽佛鑑師と洞慶院の梅園

先日洞慶院へおじゃました際に、「丹羽佛鑑師」という小冊子をコピーさせていただいた。佛庵師の先師。佛庵師を考える手がかりがあるだろうかと読んでみた。佛庵師への言及はなかったが、この中に洞慶院梅園の由来が記されていた。 その冊子は、『教の友』第…

洞慶院にて

臘八のさなか、静岡・洞慶院を訪れた。 快晴の富士、寒気さえも好ましい朝。 初めてここを訪れたのは30年以上前。二十歳前後のこと。東京別院の学寮で一緒だったスリランカの友人がここの前堂頭・丹羽簾芳師の弟子。彼の法戦式に随喜したのがその時だった。…

尼僧 小島賢道師

「梅花流誕生」の背景を考えている。 先般、新宿区観音庵の東堂・笹川亮宣師にお会いした折、師がこのように言われていたのが気になっていた。「私は当時、尼僧団の書記をしていたのですが、尼僧団の小島賢道さんから“あなた行ってきなさい”と言われて、先輩…

笹川亮宣師範

東新宿の駅から住宅街の小路を歩く。 塙保己一の眠る墓があるという観音庵。 逢いたかった女性がそこにいる。 笹川亮宣師範。大正13年生まれ。御年91歳。梅花流正伝師範。 昭和26年、野村秀明師、熊倉実参師とともに、曹洞宗尼僧3名が、密厳流詠歌修学のため…

舞曲 修証義の歌

昭和24年4月1日に、「曹洞宗社会部」(曹洞宗宗務庁の前身)より発表されたもの。 原曲は現在の修証義御和讃とは違う。 梅花流発足以前の曹洞宗詠讃歌の一例。

尼僧団団歌

〈FBの過去記事に埋もれそうなのでこっちにあげておこう〉 雑誌『大乗禅』昭和25年3月号の記事です。曹洞宗尼僧団の団歌が完成発表となりました。赤松月船師の作詞です。梅花流発足以前に〈赤松師-歌-尼僧〉の関係を示すものとして気になりました。梅…

大島賢龍師範

今年、11月23日。 現役にして梅花流草創期の大先達大島賢龍先生をお訪ねしてきた。 御年、91歳。奥様と仲むつまじく、かくしゃくとしたふるまい。力強いお声。「梅花流は道元禅師の信仰を弘めるために始まったんだ」という言葉が印象的。いろいろと伺ったが…

梅花の師

この位牌(写真は裏表両面)は、先日おじゃました京都西方寺様所蔵のもの。西方寺様先代の故小川義道老師が護持していたもので、裏面にその旨が記されている。表面にある名前は、初期梅花流の大先達・大賀亮谿正伝師範。今回の静岡行でもしばしばその名を耳…

静岡行

10月20日 静岡駅到着 曇天 家康公に挨拶 21日 初日会場 雨の中を受講者が来てくれる。 第二会場 中庭の拵えがなかなか 二百三十年前の造作を極力変えずに修復を繰り返したとか。みごとな蛇腹天井。 境内の樹木が雪国仕様じゃないね。 藤枝のホテル前。夜明け…

水鳥のみち その4

3)道元の立場から 私の考えの結論めいたことをまず記します。それは、「中国禅の伝統において〈鳥道〉とは没蹤跡を表す常套的用語であって、道元禅師の〈水鳥のみち〉という用例もこの意味を踏まえている」ということです。そしてこの場合「〈鳥道〉とは空…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(12・最終回)

⊿ ⊿ ⊿ 以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ 駒澤大学の和讃、詠歌 昨今大学生の間に長唄、謡曲、義太夫、花道、茶道に精進するものが多くなったことが、たびたび新聞で報ぜられた。このことについては、私はいろいろ考えさせられていた折柄、駒沢大学で学生自らの発願によって…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(11)

⊿ ⊿ ⊿ 次回で最終回です。以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ 春秋二季の彼岸法要 博善社では、春秋二季の彼岸には寺院方を招待して同社関係の火葬場でもすべての火葬者の供養法要が各火葬場廻り持ちで営まれる。その法要は、社員全員の「朝礼勤行」によって始められ、次に寺…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(10)

⊿ ⊿ ⊿ 以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ 火葬場の場合 今の東京博善会社の社長中山理々さんが、戦前専務理事であった時、火葬場の従業者達のための歌唱唱和を立案されたのには、私は敬服した。歌唱のテキスト「心のうた」が次々と作られるやら、オルガンを各火葬場に備え付…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(9)

https://www.youtube.com/watch?v=ANOgrw4SdCk ⊿ ⊿ ⊿ 以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ 電話局の場合 伝道館の小林主事さんの懇望で墨田電話局に歌唱指導を始めたのは昭和7、8年頃と思う。これは小林さんが毎月精神講話をやって居る、その時間を折半してやったものであった。…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(8)

⊿ ⊿ ⊿ 以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ 仏教青年伝道館の場合 ここでの仕事は、たしか昭和6年から数年続いた。左の一文は東本願寺の施誌「十方」の昭和25年6月号に書いたものである。 木魚に歌う 花祭りが盛んに行われるように努力された安藤嶺丸先生の発願によって建立さ…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(7)

⊿ ⊿ ⊿ 以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ 川越少年刑務所の場合 巣鴨刑務所での歌唱指導がきっかけとなって、各刑務所へ行くようになった。 中でも川越少年刑務所には、毎週一回行った。ここでは所長始め所員皆出席して、収容者と一緒になって唱和した。名は刑務所であっても…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(6)

⊿ ⊿ ⊿ 以下、本文 ⊿ ⊿ ⊿ “うつし世”について 私の幼少の頃、郷里(宮崎県延岡市)で私の母達が先に立ち仏教婦人会を組織していた。この会は、毎月一回真宗の寺で集会した。その頃真宗の寺は四ヶ寺あったので廻り持ちに集会したものであった。集会の時は、そ…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(5)

今回の引用箇所にある「巣鴨刑務所」、第二次大戦後にはGHQによって接収されて、「スガモプリズン」と言われたところです。その当時は戦争犯罪人の一時収容施設であり、さらには極東国際軍事裁判により死刑判決を受けた東條英機ら7名の死刑が執行(昭和23年1…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(4)

今回の引用箇所にある「仏教音楽会」は、正式には〈仏教音楽協会〉と謂い、昭和2年(1927)7月にその創設について協議が行われ、翌昭和3年(1928)1月に「仏教音楽ノ大成及普及ヲ図ル」ことを筆頭の目的に掲げ設立されました。会長・四條隆愛、理事長・中島…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(3)

今回の引用は「声」と「音楽」に関するものです。 はじめの方に見える「ダミ声」の例はなかなかおもしろいと思いました。 また軍隊生活のことに触れていますが、権藤師は、大正4年(1915)に東京音楽学校を卒業後、山梨県師範学校に勤め、次いで兵役に従事し…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(2)

今回の引用箇所にある〈梵讃・漢讃・和讃〉という説明の仕方は、早い頃に梅花流の複数の先生達から講習の際にお聞きしていたことでした。こうしてみると、この理解は権藤師が端緒になっていたかもしれないという気がします。 真宗大谷派のご寺院出身である権…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」(1)

梅花流詠讃歌を参究するために、それぞれの歌意を解説するものは少なくありません。けれども詠唱・詠讃という、いわゆる「うた」そのものについて説得的に説いている資料はまださほどに多くないように見受けられます。 そのような中で、『三宝御和讃』をはじ…

権藤圓立「聴覚による布教の仕方」『布教指導叢書第9輯・立体布教』(昭和28(195312)刊行。本文末の識語は昭和28年(1953)12月1日脱稿)曹洞宗宗務庁教学局

本布教指導叢書第の刊行は、昭和27年の佐々木泰翁宗務総長を筆頭とする曹洞宗内局の先導によって開始された「正法日本建設運動」の一環としての布教施策の一つと思われる。民衆布教の理念的かつ具体的展開を多くの執筆者が述べている。 権藤はこの頃「三宝御…

飛鳥寛栗「六章 声楽家 権藤圓立」『それは仏教唱歌から始まった-戦前仏教洋楽事情-』199912、星雲社

ふとしたことから内容もわからず購入。 権藤圓立と梅花流の出逢いのくだりがあった。著者は龍谷大出身。大谷派。仏教音楽では業績あり。同著者による『日本仏教洋楽資料年表 』あり。 著者は大正4年(1915)生まれ。同じ時代を生きた仏教音楽関係者について…

清水脩「新しい仏教音楽に就て(一)~(五)」『中外日報』昭和23年7月23,24,25,29日

梅花流発足以前の「仏教音楽」をめぐる動態観察のための資料 新しい仏教音楽展開のための五つの条件 1,仏教音楽の創作と演奏に携わる人の宗教的信念の存在 「新しい仏教音楽に携わる者は、僧侶又はこれに準ずる者、或いは少なくとも篤信者でなければならな…

水鳥の道 その3

以上を踏まえれば、少なくとも中世歌語としての「水鳥のあと」は、水面上の航跡と考えるのが一般的であるように思えます。ただこれは短い時間で手元の資料を拾い読みしただけのことですから、空路とする例もあるかもしれない、と付け加えておきます(個人的…

水鳥の道 その2

この度の小野さんの投稿、非常に勉強させられるところありました。SNSがこんなやりとりで深まってゆくと、ありがたいなと考えていたので、うれしく思います。 不勉強ながら、若干の卑見を申し上げて、あらためてご意見いただければ、自分にとって一層益す…

水鳥の道 その1

すでにFB上でやりとりしていた内容だが、その問題のおもしろさと私からの答えが中途で終わったままになっていることから、それを全うすることを果たすためにも、とここに取り上げる。 きっかけは梅花流師範・小野卓也氏のブログにアップした以下の記事だった…

梅花流以前の梅花 その5

【2】 次いで、昭和21年5月発行の『大乗禅』昭和20年8月-昭和21年4月合併号(通巻249)を採り上げよう。 ここに、戦時中とは異なる大きな変化を認めることが出来る。 それはタイトルにうかがわれるように、 1)「民主主義」「自由」という、民主化・自由…