BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

ときには毎日一本

下田正弘「伝承といういとなみ‐実践仏教学の解釈学‐」 『親鸞教学』93、2009年3月

著者注「本稿はそ(引用者注:下田「生活世界の復権‐新たなる仏教学の地平へ」『宗教研究』№333、2002年)の続編をなす」 エドモンド・リーチは社会人類学の叢書の一冊において『実践宗教における弁証法』という著書を編み、そのなかでヨーロッパにおける仏…

下田正弘「〈近代仏教学〉と〈仏教〉」『仏教学セミナー』73 2001年5月、大谷仏教学会

〈仏教学が仏教を変えてきた、あるいは仏教そのものを作り上げてきた〉 アジアにはさまざまの仏教徒が生活をしています。(中略)これらの仏教徒たちはそれぞれの地域や歴史に限定された特色を持ちつつも、〈仏教徒〉として共通の世界に生きている意識を持っ…

下田正弘「神仏習合という可能性‐仏教研究と近代‐」『宗教研究』81(2) 2007年9月

〈論文要旨〉神仏習合の裏面の問いとしての神仏分離には、近世から近代にかけて中央集権国家を構築した日本の歴史全体が反映する。仏教の迫害と変容の基点となった明治維新をとりまく暈繝には、権力支配の構造の変容と諸知識体系化の歴史が重なりあう。経世…

下田正弘「仏(ブッダ)とは何か」『駒澤短期大学仏教論集』第5号、1999年10月

さまざまなヴァリェーションがある仏教において、最低限の共通項は何かと問われるなら、それは「三宝の存在」であると考えられること、それだけを申しあげておきましょう。 仏宝、法宝、僧宝の「三宝に帰依をする」ことによって人々は仏教徒になっていく。時…

飛鳥寛栗「六章 声楽家 権藤圓立」『それは仏教唱歌から始まった-戦前仏教洋楽事情-』199912、星雲社

ふとしたことから内容もわからず購入。 権藤圓立と梅花流の出逢いのくだりがあった。著者は龍谷大出身。大谷派。仏教音楽では業績あり。同著者による『日本仏教洋楽資料年表 』あり。 著者は大正4年(1915)生まれ。同じ時代を生きた仏教音楽関係者について…

長谷部八朗「「桜井民俗学」と講研究」『「講」研究の可能性』201305、慶友社

桜井徳太郎先生(以下ときに敬称略)。かつてゼミ生の末席を汚した。小柄ながら温厚な先生。ほとんど門外漢のような私の発表や論文にもていねいに所感を寄せてくれた。おそらく先生の著作の半分も読んでいないかもしれないが、こんなことを思っていた。専門…

水野弥穂子『『正法眼蔵随聞記』の世界』大蔵出版、199210

カトリックの学校にあって、仏教への関心から、橋本恵光老師について得度、沢木興道、酒井得元、内山興正各老師への参学、道元の著作との出逢い等語る「序」が印象深い。 袈裟を把針し、信仰する思いで宗典を読むその姿勢に、自分の身を恥ずかしく顧みる。 …

清水脩「新しい仏教音楽に就て(一)~(五)」『中外日報』昭和23年7月23,24,25,29日

梅花流発足以前の「仏教音楽」をめぐる動態観察のための資料 新しい仏教音楽展開のための五つの条件 1,仏教音楽の創作と演奏に携わる人の宗教的信念の存在 「新しい仏教音楽に携わる者は、僧侶又はこれに準ずる者、或いは少なくとも篤信者でなければならな…

能仁柏巌撰述『曹洞宗問題十説』明治八年(1875)十一月再版(同年四月稟准・自序、同五月初版)

前回に続き、「年忌葬祭説」の後半「送終部十条」をアップ。 送終部十条 一ニ葬法 法苑珠林第百十六(初丁)ニ云ク、天竺ニ四種ノ葬ノ法アリ。一ニハ水葬、謂ク江河ニ投テ魚〓ヲ飼フ。二ニハ火葬、謂ク薪ヲ積デ之レヲ焚ク、コレヲ荼毘トモ闍維トモ謂フ。後分…

能仁柏巌撰述『曹洞宗問題十説』明治八年(1875)十一月再版(同年四月稟准・自序、同五月初版)

先週ずっと本庁の養成所詰め。カンヅメ生活を言い逃れにアップをサボっていたので、反省。二つくらい行っとくか。 この資料は明治初期の教導職試験対策の参考書とも言うべきもの。一応、準公式的見解と言ってよいだろう。 全十条のうち、第四条にあたる「年…

小松茂美「「百鬼夜行絵巻」の謎」『日本絵巻大成25 能恵法師絵詞 福富草子 百鬼夜行絵巻』1979、中央公論社

『百鬼夜行絵巻』の書誌と、この絵巻の目的に関わる考察。 一 百鬼と百鬼夜行 左大臣藤原頼長の日記『台記』康治3年(1144)5月5日条 「百鬼を見るの術」 暦法博士賀茂在方編『暦林問答集』(1414成立) 「夜行を忌む。てえれば、百鬼夜行日と名づく」 鎌倉…

玄楼奥龍「第四龍満寺分」抄『蓮蔵海五部録』巻三&『道用桑偈』

『蓮蔵海五分録』巻三 第四龍満寺分 龍満寺は但州二方郡諸寄村に属す。山を諸谷と号す。明和四年(一七六七)丁亥二月二十八日を以て進山す。時に四十八歳なり。 結冬示衆 吾が此の所在は、北海の辺隅、千山萬壑之を三面に帯たり。世間の消息、濫りに通ぜず…

太田由佳「活動年譜・70代」『松岡恕庵本草学の研究』2012,思文閣出版

西暦 年号 月 日 年齢 事項 誕生 1737 元文2 3~4 70 「太極図説」講義を開講する。 1739 元文4 5頃 72 『古語拾遺』講義を開講する。 1739 5 72 「太極図説」講義を開講する。 1739 11 16 72 甲賀通元『医方紀原』に序文を寄せる。 1739 72 『左伝比事』を…

高階瓏仙「告諭」 佐々木泰翁「平和条約の発行」 『曹洞宗報』昭和27年5月号 195205

昭和27年4月 佐々木泰翁内局成立 これ以後、佐々木総長の下、曹洞宗教団は民主化。平和主義、正法敷衍の路線を積極的にてんかいする。 第205号昭和27年5月号 告報 国民待望の平和条約はその効力を生じ、茲に吾が日本がその主権を回復して独立するに至りしは…

角張月峰「日本再建と道義心」『大乗禅』23-3、昭和21年8月号(194608)

「日本再建」とは、戦後日本の一つの命題とも言えるもののように感じてきた。 社会の各層、各組織でこの命題に挑んでいるように感じる。 とすればこの作業をもう少し続けて、そこに見える傾向・特色を見出せないだろうか。 「徳は本也、財は末也」(大学の孔…

新日本建設ニ関スル詔書 官報 昭和天皇 19460101

「人間宣言」と通称されることもあるこの詔書 これ自体の問題も様々に問いただされているようだが、しばらくはこの後に日本の各層で盛んになる「新日本再建運動」の端緒としての意義を考えるためにこの詔書を採りあげてみた。 以下は国立公文書館でこれを掲…

栗原健一「秋田藩における山村の備荒貯蓄-出羽国秋田郡小猿部七日市村を事例に-」『徳川林政史研究所研究紀要』48、201403

秋田県立公文書館所蔵の長岐文書をもとにした本格的研究 これまでの田口勝一郎を初めとする県内研究者の成果をしのぐものと思う。 はじめに 一 文政期の「郡方備米」と「郷備米」 (一)文政三年の「郡方備米」 (二)文政六~八年の「郷備米」 (三)文政十…

ダライ・ラマ14世『傷ついた日本人へ』201402、新潮新書

(5月28日より梅花全国大会で3泊4日で島根へ。こうなってくるとなかなかアップできない) 高野山における講演のリライタを中心としたもの。 主旨は、東日本大震災を経験した日本人に対して、苦境にあってもその苦の原因をしっかり見つめ、智慧によって苦を克…

ジョン・W・ダワー「第10章 戦争直後の日本からの教訓」『忘却のしかた、記憶のしかた-日本・アメリカ・戦争』(訳・外岡秀俊)201308、岩波書店

解題 「この文章は2002年10月末、イラクにたいする戦争の体勢が一段と変速ギヤを高めたころに、『ニューヨーク・タイムズ』紙の論評ページに掲載された。それはまた、米政府当局者たちが、フセイン打倒後のイラクに期待される解放と親米への方向転換にあたっ…

ジョン・W・ダワー『容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別』(訳 斎藤元一)平凡社ライブラリー、200112、平凡社

同著者の『敗北を抱きしめて』に出逢い、著者の本をあさったうちの一つ。 1987年刊行の『人種偏見 太平洋戦争に見る日米摩擦の底流』(同訳者、TBSブリタニカ)の平凡社ライブラリーとある。 原題は War without Mercy : Race and Powe in the Pacific Wa…

佐々木潤之介「長崎七左衛門「都鄙ノ隔尤然タリ」」『地域史を学ぶということ』1996,吉川弘文館

(昨日の分) 著者・佐々木は早大教授・一橋大名誉教授・秋田県出身。 本著は1998年6月21日に著者より大館郷土博物館で贈与された。 それは『街道の日本史・北秋田と羽州街道』編集打合会の時だった。 本編は秋田近代史研究会、創立35周年の講演会をもとにし…

高橋文二「解説・春は花」『原文対照現代語訳道元禅師全集17・法語・歌頌等』201012、春秋社

(昨日分) 詠本来面目 春は花夏ほととぎす秋は月冬雪きえですずしかりけり 訳 「春の花も夏のほととぎすも、また秋の月も冬の雪の消え残っているさまも、みなそれぞれ自己本来の面目を十全に表し、相対的なありようを超えていのちのかくれなき真実の姿を表…

見理文周「「道元の和歌と漢詩」について」『国文学解釈と鑑賞』64-12,1999

「彼(道元)は『新古今和歌集』の申し子のような存在である。すなわち、『新古今』の選定が終了する五年前、後鳥羽院がこの歌集を作るために和歌所を設置した翌年(正治二年・1200)に京都に出生した。そして、これまで道元の父とされてきた内大臣の源通親…

林左馬衞「釈元政の文学における心と狂 ‐ 一つの近世日本公安派文学序説ならびに論」『芸文研究』27,196903

(昨日の分) 元政関連文献を調べてヒットした論文。林左馬衞のものは初めて。 出逢った、といえる論文。執筆者に興味惹かれた。 句点の頻出する独特の文体。流暢な漢詩訳。漢詩文の読解の深さ。 この執筆者の書いたものを読みたいと思った。 調べてみると既…

大場南北「鏡清雨滴一首考」『道元禅師和歌集新釈』(1971、中山書房)

鏡清雨滴一首考 聞くままにまた心なき身にしあらばおのれなりけり軒の玉水(面山本) (一、類歌 二、古人の解釈 省略) 三、一首について この詠歌は、その題名と共に、どのような子写本にも見あたらない一首で、面山和尚は、一体これをどのような文献から…

太田水穂「傘松道詠集と良寛」『和歌俳諧の諸問題』1926(大正15),共立社

「ここに云はうとするのは傘松道詠集と良寛の歌との関係である」 「傘松道詠集は鎌倉時代の産出であるが、あの新古今の風体が盛りを極めた時代に、仮令大部分道歌であったとは云へ、之れだけの家風を自分のものとして匂はしていたのは力づよい事である」 (…

ダライ・ラマ14世『ゆるす言葉』2008.8初版、2011.10第五刷 イースト・プレス

「不安に対処する有効な方法は、 自分のことを考えずに、人のことを考えることです。 本当に人の困難を目にすると、 自分のそれは大したことではなくなります」 「怒りと憎しみこそが、私たちの本当の敵なのです。 これこそ私たちが全面的に立ち向かい克服す…

末木文美士「『無名集』『隠語集』解題」『真福寺善本叢刊』第三巻、阿部泰郎・山崎誠編集責任 2006.11(臨川書店)

はじめに 真福寺より発見された新資料は「これまでの栄西像を大きく書き換える可能性が出てきた」。 一、『無名集』 略 二、『隠語集』 縦 17.8cm 横 15.8cm 全二十二丁 表紙「隠語集 未再治」 内題「隠語集序 栄西記」 栄西真作の根拠 1 「未再治」とされ…

堀川貴司「抄物の類型と説話」『伝承文学研究』26,2013.8 伝承文学研究会

抄物の類型を試みる。石川力山、飯塚大展とは異なるもの。 一 類型 ア 対照となるテクスト(原典)による分類 漢籍 師部分類のうち集部が最も多く、史部がそれに続き、経・子は少ない。初学書である『三体詩』『聯珠詩格』『古文真宝』、規範とすべき作品『…

千葉克一「照井竹泉は照井藤右衛門か-新資料『秋田藩十二所陪臣家筋取調書』からの考察-」石渡博明・児島博紀・添田喜雄編著『現代に生きる安藤昌益』201210(御茶の水書房)

狩野亨吉『安藤昌益』1928、渡辺大濤『安藤昌益と自然真営道』1930にみえる「照井竹泉」を追求するのが本稿の目的。渡辺は照井から昌益に寄せた手紙の署名を「〓右衛門」と読み、〓は未判読としている。 照井竹泉に関する先行研究に三宅正彦「南比内十二所町…