よこみち【真読】№58 「蒲牢、ねえ」
どなたか、おわかりの方は教えていただけないだろうか。
この度の本編、龍と鐘にまつわる由来譚。
そこで自然と浮かぶのがこれ。
ご存じ、梵鐘の「龍頭」である。
なるほど本編の引く『西域記』の故事は、龍頭の由来であったのか、と短絡に思ったのだが、どっこいそう簡単ではなかった。
念のために、と手元の辞書や類書のたぐいをめくってみたが、これと同じ説を説いているものにまだ出逢えない。というよりも、鐘の龍頭に関する由来を説くものがほとんど見えず、龍に関する類書の説でも、『真俗』が挙げている話はなかなか出てこない。いったいどうしたわけだろう。
あれこれ探している間に「蒲牢」というものが出てきた。
想像上の海獣の名。鯨に襲われると大声を発するとされるので、その首をかたどって鐘のかざりにつけ、撞木を鯨にみたてて、鐘の音が大きいのを願う。また、そのかざりや、そのかざりをつけた鐘。転じて、ひろく鐘のこと。(日本国語大事典)
『大漢和辞典』が挙げる用例に次がある。
文選注‐班固・東都賦「(発鯨魚、鏗華鐘)善曰、薛綜西京賦注曰、海中有大魚、曰鯨、海辺又有獣、名蒲牢、蒲牢素畏鯨、鯨魚撃蒲牢輒大鳴、凡鐘欲令声大者、故作蒲牢於上、所以撞之者、為鯨魚」
たしかに画像でググると龍頭と同様のものだ。
wikiにはあんまり頼りたくないのだが、そこにも
「故に梵鐘などの釣鐘の鈕(釣鐘上部の、吊るすために綱などを通す部分)の飾りとなり、鐘の音を大きく響かせるのを手伝っているという。この鈕の事を日本では『竜頭』(りゅうず)と言う。腕時計の竜頭はこれに由来するとされる。鐘繋がりで時計の装飾に蒲牢が施されていたのが、腕時計のゼンマイ巻きの装飾になり、簡素化されて龍の装飾は無くなったが言葉だけが残った、とされる。」
やっぱりそうなのかな。こんな画像も出てきて
蒲牢とは龍生九子の一だなんて、これまたwiki寄りの説明になっちまう。
こうなってくると、たしかに〈蒲牢=鐘の龍頭〉説はたしかなものらしい。
でもなあ・・、
なにをうじうじしているかというと、
1)〈蒲牢=鐘の龍頭〉説がしっかりしたものだとすると、なぜもっと人口に膾炙していないのだろう?
2)本編の紹介している『西域記』の「龍と鐘の話」だって、鐘の龍頭の由来として普及してもよさそうなのに。どうして『真俗』のみ(かどうかわからんけどね)がぽつりと述べているだけで、外の類書にはあまりみえないのだろう?
という二つの疑問があるからだ。
さてグループメンバーの諸先輩、どうもすっきりしないのだが、いかがだろう?