BON's diary

「何考えてんだ、お前はっ!」 「い、いろんなこと」

【真読】 №104「形見の衣」 巻四〈送終部〉(『和漢真俗仏事編』web読書会)

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テキスト http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/818707 コマ番号45

 亡者形見の衣を律には唱衣と称(なづ)く(唱衣の義、下の『十誦律』を以て知るべし)。僧、死してその衣を衆僧に分かち与うに、多人には等分に別け難し。このゆえに仏、大衆を集めてこれを売って、その値を等分に与えたまう。
 ここを以て『十誦律』に曰く、「売衣、未だ三唱せざるに、比丘、値を益す。後、心悔疑して彼の衣を奪う(疑はこれ前の酬価の者に奪わんことを)。仏の言く、未だ三唱し竟(おわ)らざるに、価を益すは犯ならず」。
 ○『増輝記』に云く、「仏の衣を分かちたまう本意は、それ受ける者のこの衣を見る毎にその死せる者を思い出さしむるためなり(吾が俗、形見と名づくるはこれに拠るか)。謂く、睦まじく交わりし彼の僧、無常の風に遭うて去りぬ。我れまた久しからず。かくの如く衣類を他に分けらるべしと。この思いを催して貪求を息(や)めさせんための方便なり。しかるに今の僧は仏意を察せず、形見の衣来たれば欣(よろこ)び集まり、喧(かまびす)しく呼んで、値いを争い、却て快楽とす。誤りの甚だしきなり」(已上)。