【真読】 №114「施餓鬼」 巻五〈雑記部〉(『和漢真俗仏事編』web読書会)
吾が門の徒は日々必ずこの法を修すべし。儀軌にも獲る所の福利果報校量すべからずと云へり。
○『仏説救抜焔口餓鬼陀羅尼経』(不空訳)曰く、阿難、独り静処に居して所受の法を念ずるに、その夜三更以後に当って焔口と云う餓鬼、阿難の前に現ず。その形醜陋にして身体枯痩して口中に火燃え、咽(のんど)針鋒(はりさき)の如し。頭髪蓬乱し爪牙(そうげ)長利にして畏(おそろ)しかりけるが阿難に白(もう)して言く、「却後三日、汝が命尽きて餓鬼の中に生まれん」と。阿難、これを聞いてはなはだ惶(おそ)る。「我、いかなる方便をなしてこれを脱(のが)れむ」と問いたまへば、餓鬼こたえて曰く、「汝、もし明日に百千恒沙数の餓鬼と、百千の婆羅門仙等に摩伽陀国の斛(ます)にて一斛の飲食を施し、ならびに我がために三宝に供養せば、この功力を以て汝も寿(いのち)を増すべし。我もまた餓鬼の苦を離れ、天に生ぜん」と申しければ、阿難、はなはだ怖(おそ)るべく、疾に仏所に至って、彼の焔口鬼の我に語ることを一一仏に告(もう)しければ、仏、阿難に告げたまはく、「怖れることなかれ。我に方便あり。諸の餓鬼・婆羅門仙等に種々の飲食を施さしむべし。“無量威徳自在光明殊勝妙力”と云う陀羅尼あり。この陀羅尼を誦すれば、百千恒沙数の餓鬼及び婆羅門仙等に上妙の飲食を充足せしめ、一一の餓鬼に摩伽陀国の斛(ます)を以て七七斛の食を得せしむる」となり。世尊、重ねて言(もう)さく、「我、前世に婆羅門たりしとき、観自在菩薩の所と及び世間自在威徳如来の所において、この陀羅尼を受く。ゆえにこれより無量の餓鬼及び諸の仙等に種々の飲食を施し、諸餓鬼の苦身を脱して天上に生ぜしむ。阿難、汝今受持せば、福徳寿命皆な増長を得む」と。その時世尊、すなわち陀羅尼を説きたまう。